【稽古理念】

虚空塾の稽古は武芸を「武道する」ところにあります。「武道」するとは単に武術・武芸を通して汗を流すのみでなく武芸を通して哲学する、術理を得るために考え抜くということです。例えば禅僧は座禅を組んで悟りを得ようとしますが、虚空塾の「武道する」とは身体を動かしながらの座禅、つまり「動く禅」とも云えるでしょう。動く禅、その様に表現すると小難しくなり「武道する」ことが大袈裟に聞こえるかもしれませんが、日本の伝統武芸の世界や歴史においては当たり前のように実践されて来たことなのです。


大東流にも虚空塾で稽古している他の日本武芸にも我々現代に生きる人間からは想像も出来ないような身体操作、技や術が詰まっています。それは先生から口で言われてすぐ出来る様なものばかりではありません。それを再現して自分で出来るようになるには、単に頭で考えるだけでなく自らの身体で考え身体と対話する必要があります。古の武芸の達人たちもそうやって工夫や苦心を重ね己の武芸を極めて来たのです。


何だか「武道する」とは面倒な感じだと思われたかもしれませんが、寧ろ我々現代人、特に現代日本人にとってはこれほど面白いことも無いのではないかと思うのです。今やインターネットが発達し多量の情報がすぐ手に入りますが玉石混交であり何が本当か、何が自身に有用な情報か判別し辛い時代です。しかし、そういう頭で判別出来ない多量の情報でなく身体で苦心して手に入れることの出来る、体格の大小、筋力の強弱を超えた技や術、つまり身体で習得した確かな情報は、最高に面白く、いやそれ以上に感動すら覚えることが出来るのです。


虚空塾ではとことんまで「武道する」稽古を行っています。この様な稽古内容なので、子供には分り難く退屈に感ぜられるのではという考えもあり、入門は18歳以上としている面もあります。ただ、今までの人生で見るべきものは見て来た、経験できる大概の事はして来た、もう驚くこともそうそう無いだろうと思い込んでいる大の大人にとって虚空塾の稽古内容は斬新で興味深いと思われます。